蒋介石を救った帝国軍人

 

実は国共内戦で台湾に退避した蒋介石軍を訓練したのは旧日本軍将校達だった。

 

この本を読むまで、こんな事実があったとは知らなかった。

戦後台湾に赴いた、旧日本軍人は白団(パイダン)と呼ばれていたとのことだが、白団に関する書籍は他にも出ているので、事実であろうことは疑いがない。

 

 

 

太平洋戦争に至る以前から日中戦争が長期にわたって展開され、大陸で日本軍が苦戦を強いられ続けたのは周知の事実。

 

一方で、戦闘力で中国軍(中華民国軍)との闘いに苦しんだわけではなかったようだ。

結局地の利を生かして、中国側は奥地に逃げ込み、日本軍の補給線が伸びきって決定的な勝機を得られない状況が戦争長期化の主な要因・・・という認識でいる。

(正確に日中戦争を研究したことはないので聞きかじりの知識である)

 

しかしながら、そうやって日本軍を翻弄しつづけた中華民国軍は、その後の国共内戦八路軍共産党軍)に敗戦を重ね、台湾に撤退を余儀なくされる。

 

実際には、戦況が不利になると共産軍に寝返る将兵も続出したようである。

 

といったことはあったにせよ、結果として日本軍は中国軍に敗れた(勝てなかった)。

 

しかしながら、台湾に渡った中華民国軍は軍としての立て直しが急務となり、組織だった教育体系、戦闘教本を持たない状態からの対応が不可欠となった。

 

そこに目を付けたのが蒋介石であり、敗戦で失職した旧日本軍の職業軍人たちは、この誘いに乗ったのである。当然ながら、旧日本領といえ、戦後の混乱期に海を渡って、旧的の支援を行うことにはそれ相応もリスクもあったから高待遇での赴任となった。

 

その結果、金門島への共産軍の攻略には日本人顧問団の作戦指導によって、大軍を撃退した実績があるとされる。

 

こういう話を見聞すると、旧日本陸軍の基礎能力、教育体系、作戦指導要領などの基礎的な対応力には改めて興味を持つ。

 

私の日本陸軍へのイメージは、機械化の遅れ(技術軽視)、精神力先行、銃剣突撃による白兵戦での決戦・・である。

 

一方で、硫黄島沖縄戦ペリリュー島等の攻防戦では、米軍に甚大な被害をもたらせている。敗因は、総合支援力不足(航空支援、艦砲支援の欠落)、補給線の断絶である。直接戦闘では、米軍に対しても優勢であった事例がある。

 

こういう戦闘結果からみれば、的確な用兵戦闘計画、戦闘指揮体系を構築する能力というか体系は備えていたであろうことの裏付けとも考えられる。

 

逆に蒋介石は、台湾に撤退したときにはすでに烏合の衆となってしまった、中華民国軍にきちんとした(体系的に組織された)日本軍のルーチンを語れる人材がいることによって立て直しが可能と考えたのであろう。

 

白団結成からすでに80年以上が経った今、現代の中国軍および台湾軍の真の能力は知るべくもないが、本来組織の能力発揮の可否はこういった基本マネジメント能力と体系だったマニュアルの存在が肝になるのではないかと感じた。

 

逆の見方をすれば、敗戦に至った原因の一つは旧日本軍自身がマネジメントの重要性を忘れていた結果だったのかも知れない。

 

もちろん、工業生産力、補給能力を無視して無謀な戦争に突入した政治家(軍人が政治家になっていたのであるが)の責任は最も大きいのは言うまでもない。この視点については別の機会で。